平屋住宅の設計において大切にしていることや、他社にない独自のサービスはありますか?

茂野:
一番大切にしているのは、プランづくりです。当社と他社さんとの決定的な違いは、ファーストプランを営業ではなく、設計士がつくっている点です。

他の工務店さんやハウスメーカーさんのなかには、来店時に接客した営業マンがお客様の希望や疑問点をヒアリングして、間取りプランを作成しているところもあります。その後、設計士が図面を清書。設計士はお客様と面会しないケースもあるようです。

木村:
そして、もう一つ大きな違いとして、当社では簡単に間取りプランを出さない、ということです。

お客様の要望通りのプランなら、営業マンが一日あればつくれます。ですが当社の場合、私たち設計士が土地の特徴や周辺環境、お客様のライフスタイルに合わせたプランを、時間をかけてゼロから練り上げていきます。


プランを提案するまでの具体的な流れを教えてください。


筑井:
まずは、営業マンと設計士がお客様のご相談内容を伺います。次に、担当設計士が建築予定地に足を運び、敷地環境調査を行います。

敷地環境調査を営業や専門業者に依頼するハウスメーカーさんもあるようですが、この調査は誰が行っても同じではなく、そこから何を見出して、どのように設計に反映するか、行う人の観察力や想像力が問われます。だからこそ、当社では設計者自らの目や耳、肌で感じ取ることを大切にしています。

その後、調査結果とお客様からのヒアリング情報をもとに、2週間ほど時間をいただいて、間取りプランを作成します。


「敷地環境調査」について、具体的にどのような調査を行っていますか?


筑井:
住み心地のよさは、日当たりや風通し、眺望などに大きく左右されます。さらに、外部からの視線や隣家との距離感、影の影響なども、実際に住みはじめると気になる要素です。敷地環境調査では、これらを詳細に調査していきます。

まずは、隣地の状況です。隣りの家が近く、大きな窓からの視線が気になる場合や、隣りが公園であっても人の出入りが多い場合など、プライバシーを考慮した周囲の状況を確認します。

また、前面道路の交通量も重要です。朝夕や平日と休日で交通量が異なることがあり、それに応じて防音対策や駐車計画を立てる必要があります。

木村:
日当たりや風通し、眺望も重要な要素です。建物の方角や周囲の高さがこれらに影響を与えるため、季節ごとの変化も考慮しながら窓の配置を検討します。風の通り方や隣家との距離にも注意が必要です。


平屋住宅の間取りづくりは、2階建てよりも難しいと聞きましたが…


筑井:
そうですね。平屋はすべての居室をワンフロアに配置するため、建坪が大きくなりがちです。しっかりと考えて設計しないと、日の当たらないスペースや風の通りにくい空間が生まれてしまうことも…。また、隣家や道路など周囲の環境との関わりを考慮して、間取りや窓の配置を工夫しないと、プライバシーが守られにくくなったりもしますね。

平屋の設計において、お客さまの要望を叶えつつ、デザイン性と機能性を高めるためのアイデアや工夫を教えてください。

筑井:
大進建設の代名詞とも言える、長い「軒の出」かな。軒の出とは、屋根の軒先から突き出した部分のことで、直射日光や雨、雪などから外壁を守る役割があります。軒の出を深くすることで、夏場は直射日光が差し込まず、冬場は低い日差しを取り込んでくれます。

木村:
軒の出の長さに決まりはなく、お好みで自由に設定できます。90センチ程度が一般的ですが、当社では群馬県の気候風土を考慮して、平均して1メートル80センチの長さを確保しています。

これだけ長いと、夏の日差しはほとんど入らなくなります。逆に寒い時期の日射取得が悪くなるので、南側に大きな窓をつけるなど、窓の大きさや配置にも工夫をしています。設計士によって考え抜かれたその長さには、深い意味があるんですよ。

茂野:
平屋の場合、軒を長く出すことで、2階建ての隣家からの視線が入りにくくなるという役割も果たしてくれますね。

木村:
外観のアクセントにもなる「木格子」も取り入れています。玄関や物干しスペースを目隠ししつつ、ほどよく風や光を通すことができる優秀なアイテムです。

筑井:
外と内をつなげる「タイルデッキ」も人気です。部屋の延長線上に床と同系色のデッキを設置することで、部屋を広く見せてくれる効果もあります。ウッドデッキに比べて頑丈で劣化しにくく、水で洗い流しができるので、お手入れも簡単です。

大進建設の平屋の設計で採用されている工法について、こだわりや独自の取り組みがあれば教えてください。

木村:
当社では、独自技術の耐家工法とパネル工法を融合させた「ハイブリッド工法」を採用しています。従来の木造軸組み工法の2倍以上の柱を使用し、縦揺れ地震で発生する垂直荷重を減少させ、耐震性を大幅に向上させています。

また、一般的な在来工法では、横揺れ地震や風の影響で発生する水平荷重に対処するために筋交いを使用しますが、筋交いの端部に荷重が集中するという課題があります。それに対し、当社の工法は、パネルを使用することで荷重を分散させ、さらなる耐震性を確保しています。

「軸組工法」と「パネル工法」の利点を組み合わせた「ハイブリッド工法」により、建物の耐震性を高めつつ、間取りの自由度を確保し、長期にわたる安全性と耐久性を追求しています。

筑井:
平屋住宅は一般的に地震に強いと言われていますが、耐震性は最大限に高めておきたいものです。この工法を用いることで、耐震性がさらに高まると考えています。

大進建設の平屋の設計において、省エネルギーや環境配慮などの観点から行っている工夫や取り組みは何ですか?

筑井:
自然のエネルギーを上手に活用するために、敷地環境調査をもとに、採光の調整や風の通り道を設計しています。

光の入り方については、軒の出を深くして、夏は日差しを室内に入れないように、逆に冬は日差しを取り入れるために、採光をコントロール。風の通り方については、家の中に効率よく風を送り込めるように、窓の配置を工夫しています。

木村:
使用する材料にもこだわっています。湿度40%〜60%を保とうとする調湿効果を持つ木材や漆喰を使用するなど、自然の調湿効果で室内環境を整えています。

今までに手がけた平屋の事例の中で、とくにこだわった施工事例を教えてください。

筑井:
印象深いのは「つながりにこだわった木の家」ですね。

60代のご夫婦が暮らす平屋住宅です。こだわったのは内と外の一体感。大きな窓で庭とLDKがつながり、キッチンに立つと、リビングからウッドデッキ、庭までを一望できます。

内と外の一体感を演出するために、大開口の掃き出し窓を設置しました。室内の天井と外の天井の高さを同じにすることで、内と外の境界をぼかしています。カーテンレールはカーテンボックスに収納し、見た目すっきりした印象に仕上げています。

お客様にも大変喜んでいただけました。建てる前にご説明したときは、あまりピンときていなかったみたいですが、実際に住んでみて、そのよさを実感してくださっています。

このほか、自然光が届きにくい廊下は、そこの部分だけ天井を高くして天窓を設置。壁を漆喰にすることで微妙な陰影が生まれ、空間に深みをもたらしています。

キッチンからパントリー、ランドリールーム、脱衣所へ。LDKと水回りを回遊できる行き止まりのない間取りにもこだわりました。

木村さんはいかがですか?



木村:
風が通り抜ける家」には、さまざまなこだわりが詰まっています。

40代のご夫婦とお子さま2人の4人家族の平屋住宅です。「ランドリールームと脱衣所を分けたい」「部屋干しできるスペースがほしい」「帰宅してすぐ手を洗えるようにしたい」といったご要望がありました。生活動線をイメージしながら、分けられた空間をつなぐ仕掛けを随所に施しています。

ランドリールームは室内干しができるスペースを確保しました。洗濯物をたたんだり、アイロンをかけたりするための作業台を造作。「使い勝手がいい」と奥様に大変喜んでいただけました。

帰宅後すぐに手洗いができるように、玄関ホールに手洗いスペースを設置しています。

畑をやられているご実家から泥のついた野菜をもらうことが多いとお聞きしたので、勝手口に土間をつくり、野菜を仮置きできるように。

玄関とパントリーをつなげて、買ってきた物をすぐに収納できる動線を作りました。

部屋の天井高に変化をもたせ、空間にメリハリをつけています。キッチンと玄関の天井高を低くすることで、リビングの天井がより高く感じられ、開放感がアップします。

キッチンに立ったとき、外の景色が眺められたらいいなと思い、南側に四角い大きな窓を設置。視線が抜けて、空間全体に広がりが感じられます。遠くに山が見えるんですよ。

廊下の深い奥行きにもこだわりました。玄関に立ったときに、視界が抜ける感じが気持ちいいんですよね。