Q. 群馬県で平屋のローコスト住宅を検討する際、気候や地理的特性を考慮してどのような点に特に注意すべきでしょうか?

筑井:
群馬県は北関東に位置し、周りを山に囲まれた太平洋側と日本海側の気候が混在する地域です。

夏は日差しが強く高温多湿で、日本の最高気温になることが多い。日照時間が全国的にみて長いのも特徴ですよね。冬は山から吹きおろす「からっ風」の影響で、冷え込みが強く乾燥しがち。砂埃が入ってくるから窓を開けられない日も多いです。

夏は暑く冬は寒い、そんな気候風土を持つ群馬で平屋住宅を建てる際に、私たち設計士が大切にしていることは、自然の光と風を味方につけることです。

これはローコストな平屋住宅に限ったことではありませんが、光や風を上手に取り込んだ、明るく風通しのいい家は、誰もが心地よく感じるもの。また、湿気を防ぎ、ダニやカビの発生を抑えるなど、人も建物もずっと健康であるためにも重要な要素なんです。

筑井:
敷地環境を考慮した「窓の設計」が鍵を握ります。どんな窓をどこに配置するかは、暮らしやすさに大きく影響します。

当社では、リビングの窓は南向きにし、大きな窓を設けて自然光を取り入れる一方で、軒の出を深くしています。そうすることで、日射角度が高い夏は日差しを遮り、室内が高温になることを防ぎます。逆に、日射角度が低い冬は、暖かい太陽の日差しを家の奥まで取り込むことができます。

また、冬は北西から強い風が吹いてくるので、北や西に引き違い窓を使うと、砂ぼこりが入りやすくなります。当社では、滑り出し窓やヨコスベリ窓をおすすめしています。風の吹く角度によって、風を取り込むことができる優秀な窓なんですよ。

ただし、ローコスト平屋住宅の場合、基本的な仕様をパッケージ化して販売しているケースが多いので、その土地土地に合わせた窓の設計は、現実的ではないかもしれませんね。その場合は、快適な室内温度を維持するための断熱対策がされているか、断熱材や窓の性能をチェックするといいでしょう。

Q. ローコストの平屋住宅の耐用年数を延ばすために、群馬県の気候を考慮したメンテナンス方法や注意点はありますか?

筑井:
定期的な点検や補修は必須です。とくに外壁や屋根は、紫外線や太陽熱、雨風を直接受けるため、破損や劣化が起こりやすく、雨漏りにつながります。

雨漏りが発生すると、内部の木材を腐らせたり、住宅の耐久性を低下させるダメージを与えることにもなります。

筑井:
屋根の軒を長めに設けています。そうすることで、雨漏りのリスクや紫外線によるダメージを軽減でき、後々のメンテナンス費用も抑えられます。

とくに、外壁にサイディングを使用している場合、コーキングの劣化を防ぐために、軒の出を長くすることは効果的です。また、ウッドデッキもカバーできるので、長持ちさせることができます。

茂野:
屋根の軒の出を長くすることで、のっぺりしがちな外観にメリハリをつけることもできますよね。昔ながらの切妻屋根なら、高窓を設けて自然光を取り入れることもできますし、コストを抑えられるのも魅力です。

筑井:
最近はデザイン性を重視した「軒ゼロ住宅」が流行っていますよね。すっきりとした見た目や建築コストを削減できるといったメリットがある反面、外壁が劣化しやすいというデメリットもあるようです。一方で、軒のある家は初期費用は少し割高ですが、後々のメンテナンス費用を考えれば、充分回収できると思います。

茂野:
アフターフォローのしっかりとしたハウスメーカーを選ぶことも重要なポイントです。当社の場合、お引渡し後、3ヶ月、1年、5年、10年と、計4回の定期点検を実施。 外壁や屋根、バルコニー、床など、大事な部分をしっかり検査します。建物を維持するためのメンテナンスについてもアドバイスさせていただいています。

筑井:
少し視点を変えて、「経年劣化」ではなく「経年変化」を楽しめるような家づくりも大切にしています。例えば、無垢の床や漆喰の壁など、自然素材を使うことで、使えば使うほど味わいが増します。
無垢材は一生使い続けることができる資材です。表面が傷ついても味になりますし、削り落とすことも可能です。漆喰は汚れたり傷ついた場所だけを修復できます。消しゴムで汚れを消したりカッターで削ったり、家にあるものでお手入れできるんですよ。

Q. 群馬県でローコストの平屋を建てる際、コストを抑えつつ品質を確保するために、どのような点をチェックすべきですか?

筑井:
まずは、使用する建材の性能や耐久性をしっかりとチェックし、たとえローコストでも信頼性のあるものを選びたいです。また、設計段階で無駄のない間取りやシンプルな構造にすることで、施工コストを削減できると思います。

茂野:
規格住宅を選択することも、一つの手段かなと思います。規格住宅はすでに設計が完成しているため、設計費用を抑えられ、工期も短縮される傾向があります。

筑井:
ただし、注意しなくてはならないのは、規格住宅は設計があらかじめ決まっているため、間取りやデザインの自由度が制限され、自分たちの希望やライフスタイルに完全に合致しない場合があります。
また、建築材や設備など、標準仕様に満足できればコストを抑えられますが、特定のデザインや設備、素材にこだわりがある場合、標準仕様外のオプションを選択することになります。この場合、追加費用が発生し、当初想定していたコストよりも高くなることもあります。

筑井:
同じ部屋数でも無駄なスペースを省いて、延床面積を小さくすることで、建築費用を最小限に抑えることができます。

例えば、LDKからの動線を作ることで廊下をなくしたり、階段下や天井の低い部分など、通常はデッドスペースとなりがちな場所を収納や小型の書斎スペースとして活用したり、主寝室と隣接する部屋でウォークインクローゼットを共有したり、一つの部屋を多目的スペースとして設計し、日常的にはリビングの一部として使い、必要に応じてゲストルームやホームオフィスに転用できるようにするなど、様々な切り口でご提案しながら、お客様に選択してもらっています。

Q. 群馬県でローコストの平屋を建てる際、将来のライフスタイルの変化に対応できる設計のポイントは何でしょうか?

筑井:
前提として、ライフスタイルの変化に対応しやすいのが平屋の魅力だと思います。平屋は上下階の移動がないので、年齢を重ねても生活しやすくて安心です。

また、子ども部屋を2階につくると、子どもが独立した後は空き部屋になってしまうことも多いですが、平屋なら他の部屋にチェンジしても使いやすいですよね。

平屋の設計のポイントとしては、部屋の間仕切りを取り外し可能にして、空間の再配置ができるようにするとか、収納スペースを多めに確保しておけば、必要に応じて部屋の用途を変更できるようにすることも大切です。

筑井:
まずは、お客様とじっくり向き合うことでしょうか。10年先、20年先の暮らしを見据えて、ご家族がどんなふうになっているか、どんな暮らしがしたいか、お客様と丁寧に打ち合わせを重ね、設計プランを立てることを心がけています。

とはいえ、お客様のやりたいことをそのまま詰め込んだら、理想の平屋になるかといえばそうとも限らない…。お客様の声に耳を傾けながら、こうしたらもっとよくなるというご提案ができるよう、日々心がけています。

茂野:
当社には私だけでなく、平屋住宅に住んでいる設計スタッフが数多く在籍していますので、設計士として、親として、女性または男性として、多様な視点で間取りプランをご提案できることも大きな強みです。

Q. ローコストの平屋住宅を群馬県で検討している方々に、契約時の注意点など、専門家としてのアドバイスをお願いします。

筑井:
細かくチェックしてほしいのが、見積書の「諸費用」です。住宅会社によっては、全体の資金計画を安く見せたいという心境から、できるだけ諸費用を記載せずに見積書を作成しているケースが多々あります。
最終的な金額だけを見て、高い安いの判断をしてしまうと、後から予期せぬ費用が発生してしまうこともあります。消費税が含まれているかも忘れずにチェックしましょう。

茂野:
当社では、お客様に余計な負担がかからないように、見積書をできるだけ詳細におつくりしています。外構工事費や地鎮祭にかかる費用までばっちり含まれていますので、ご安心ください。
あとは、先ほどもお話ししましたが、引渡後のアフターサービスや保証内容もきちんと確認しておきましょう。